良性発作性頭位めまい症

 

良性発作性頭位めまい症                         研究部 中村常生

 

患者 27歳 女性

 

初診 平成28526

 

望診 身長 160cm 50kg 。顔色が青白く 目の下にクマができて元気なさそうでありました。肌の色白色やや黄色味がかっている。肌理は細かい。

 

聞診 とつとつとゆっくりマイペ-スでしゃべる。 音階は、ド 五声は、歌 五音は宮音と診ました。

 

 体臭は、あまり感じられませんでしたが、どちらかというと、ほのかに香り臭しという感じでした。 

 

問診

 

側頭部痛とめまいを生じ、近所の病院を受診する。元サッカ-選手 澤穂希選手と同じ病気

 

良性発作性頭位めまい症と診断される。病院で処方された薬を服用しても 一向に良くならないので、以前より、肩こりや腰痛で当院を受診していたため 来院するに至る。

 

切診

 

 手足が冷たい。

 

 

 

脉診 

 

脉状診 細く、虚 やや沈みぎみ 

 

脉差診 右手関上 脾の脉 浮いてひろがり最も虚。 指腹に突き上げてくる邪あり。左手寸口 心の脉 脉位になく 沈み虚。左手関上 肝の脉もやや浮き荒々しい脉。他は平と診ました。

 

腹診 腹部全体では 大腹が 小腹に比べ虚しておりました。経絡腹診では、脾の診所 圧するとややへこみ、皮膚表面に生気なく虚と診ました。心の診所も同様に虚と診ました。肝の診所 圧しても あまり指腹が入っていかず、皮膚・肌肉とも充実しているように診え、実と診ました。

 

病症の経絡的弁別

 

肌の色の黄色味  ほのかに香り臭し は、脾土の変動。 

 

とつとつとゆっくりマイペ-スでしゃべるしゃべる は 、心火の変動 

 

顔色が青白く 目の下にクマができて元気なさそうは、 肝木の変動

 

と診ました。

 

証決定

 

脉証 腹証 病症を総合判断の結果 脾虚証と決定しました。

 

適応側の判定 女性であること 臍の形状 耳前動脈から右としました。

 

治療方針と予後の判定 

 

側頭部痛は、陽明経・少陽経を整え 肩こりをとれば改善されるであろうし、

 

めまいのほうは、脾の働きを良くして水液の通調をはかり 相克的関係にある肝を調整できれば 予後良と診ました。

 

治療

 

1回目 

 

本治法 銀12番鍼にて 右太白穴に補法を行う。草原をイメ-ジし、気が丹田に降りてきたあたりで 催気をはじめる。 押手や刺手の手のひらに温かみを感じ 充足感を得たあたりで、去ること弦絶の如く抜鍼する。浮いてひろがっていた脾の脉が締まる。右大陵穴を補う。虚していた脉位が、勢いある洪脉となる。

 

左手関上肝の脉 なお指腹にあたるものがあり、左太衝穴を経に従ってさわると しまった良い脉に変化するので、和法を行う。

 

お腹もふっくら膨らみ脉に締まりと伸びがでたので、陰経を終了し 陽経の処理に移る。

 

胆・胃・大腸経に虚性の邪が感じられましたので、左光明穴 左豊隆穴 右温溜穴 に枯に応じる補中の瀉法を施す。脉状に艶と伸びが増す。本治法を終了します。

 

標治法 

 

奇経腹診により反応があった

 

左臨泣穴に、金(メッキ)鍼 右外関穴に ステンレス鍼15分間留置

 

ナソ部を銅の鍉鍼とざん鍼で処理し、

 

ムノ部を左右数箇所 ステンレス鍼にて補う。

 

腰背部

 

左胸椎の際(TH 3~5あたり)を補鍼をする。

 

押さえて抵抗が取りきれていないため ざん鍼で処理する。

 

脉状の乱れの無いことも確認し

 

1回目の施術を終了する。

 

 

 

2回目 529

 

中脉 まだ細いが、初診時よりも太くなり 沈から平になる。

 

首・肩・肩甲骨が痛む。

 

派遣のアルバイトに勤めだして2ヶ月になるが、ほぼ一日中PCを使うため、職場は肩こりだらけで 先輩に肩こりグッズを貸してもらい愛用しているとのことでした。

 

顔をまっすぐするか 回旋時に ふわ-っとめまいする。

 

右脾虚証で施術し、胆・大腸経に補中の瀉法

 

3回目 530

 

めまい消失 側頭部痛残存 首肩痛む 肩こりグッズに引き続き アロマ微香性の塗り薬を勧められる 早々に仕事をすませ来院。

 

中脉太くなる。脉状診が 浮・数・虚となる。

 

今回は、右腎虚証と診 陽経は、胃・胆の実を瀉す。

 

4回目 531

 

左耳 午前中 水槽の中で 聞いているような感覚

 

めまいなし 左下腿つる。

 

右脾虚肝実証で施術 奇経 右陥谷-右合谷穴施術

 

5回目 6月1日

 

肩こり消失 下腿引きつり消失 めまい・耳の異常感なくなる。圧痛残存

 

右脾虚肝実証で施術  奇経 左臨泣-右外関をとる。

 

一応の治癒とみなす。

 

考察

 

体質的に、脾虚証の患者さんが、バランスを崩し相克の肝の病証が出現した